すおのブログ

「桜降る代に決闘を」のことを書いているはず

劇場版レヴュースタァライトの感想

劇場版レヴュースタァライトを2回観てきました。

その感想です。視聴後のメモをベースに書いているのであまりまとまってないかもしれません。

 

※当然ながらネタバレを含みます。

 

 

 

 

新入生案内&進路相談 ~ 電車内

進路で特に印象的なのは純那の「第3志望まで大学」と香子の「日本舞踊千華流 十二代宗家 花柳彗仙 襲名 オンリー」。

純那が大学で舞台の知識を深めるというのはイメージできるんですけど、直接舞台に進む選択肢が入っていないのはかなり意外でした。これまで純那はトップスタァとの差を感じながらもまっすぐ舞台への努力を続ける人物として描かれてきたので。

香子は聖翔入学時に『日本舞踊千華流 十二代宗家「花柳 彗仙」襲名予定』と書いていたので、実は入学時から進路は変わってないんですが、学ぶことは学んだと語る香子の言葉の重みがTVアニメ第6話で口にした「この学校で学ぶことはもうないかなぁ思いまして」とは全然違う。聖翔に入ってからの香子の成長を感じました。

 

新入生案内で1年生に演技を見せる華恋純那。感情が籠もった演技で涙を流す華恋に、困惑したような表情を浮かべる純那。簡単に心が舞台から離れてしまっている。

 

電車内で「今はまだ」「いつかは」と口にする純那。口上の「見上げる私は今日限り」とのギャップが辛い……。そりゃあ、ななもあの表情になる。

 

 

皆殺しのレヴュー

ななの台詞に返すことができたのも上掛けを落とされなかったのも真矢だけ。

これは、常に『サラブレッドの天才舞台少女』として見られ、舞台の中心に立ち続ける理想の姿を求められ、そうした観客の期待や望みに応え続けてきた(応えなければ居場所がなかった)天堂真矢だからこそ唯一覚悟ができていた、ということだと思います。

ただ、そんな真矢も出血(血糊)シーンでは頭部から少し出血しているんですよ。だから、まだ足りていない。

 

台詞を返せず、まともに戦うこともできていなかった純那純那は誰よりも舞台に上がれていなかった。覚悟ができていなかった。

 

なな純那に対してだけ態度というか扱いが違ったように思います。

このあたりから、第100回聖翔祭のスタァライトにおける『塔の導き手』のような役と『大場なな』という個人の2つの役を内包していたように感じました。みんなを支える想いと個人的な感情(執着やワガママ)が混ざったような。問題提起するななと問題に直面するななが存在するからこその「私たち、もう死んでるよ」という言葉なんじゃないかと。

 

 

決起集会

不安そうな様子で離れた位置にいるまひるクロディーヌ双葉香子純那。そんな中、真矢だけが落ち着いていた。先述した覚悟の差だと思います。

台本を書き上げられておらず、不安げで弱気な雨宮さん。雨宮さんは常に強気な印象だったのでかなり新鮮でした。

そして、眞井の「あー、こーわーいよーーー!」。より良い舞台を創り続ける辛さ、観客の期待に応えなければいけない恐怖、そういった思いは俳優育成科も舞台創造科も共通なんだと認識させられました。

台本の101ページから先が書けてないのは、第101回聖翔祭の先 = 卒業後の将来 への不安や迷いを表現しているんだと思います。

あと、台本に書かれていた「今こそ塔を降りるとき」は今作の重要なワードですね。

 

 

怨みのレヴュー

 本音を晒し感情をぶつけ続ける香子に、これまでずっと我慢してワガママを聞いてきた双葉が本音でワガママを言う。この心底からの言葉を待っていたとばかりに押し倒される(?)香子。セクシー本堂とかも含めてあまりにも扇情的。ずるい。

そして、香子にポジションゼロのキーホルダーがついたバイクの鍵を婚約指輪みたいに預ける双葉。どう見てもプロポーズ。

 

 

競演のレヴュー

「大嫌いだった」のも「同じ舞台に立ちたかった」のも紛れもなくまひるの本心からの言葉。上掛けを落としてからも追求し続けた上で、最後には「私も怖かった」とひかりに寄り添い背中を押す。オーバーチュアでひかりが「嫉妬の女神は誰より深き慈愛に満ちていた」と語ったように、こうした嫉妬も慈愛も含めて『露崎まひる』なんですよ……。あまりにも解釈一致で赤べこになるしかなかった。

まひるはこの『競演のレヴュー』開始時点で『覚悟』できていたんじゃないかと思います。だから、『覚悟』を決めたまひるひかりに『覚悟』を求めるワンサイドゲームだったんじゃないかと。

 

 

 狩りのレヴュー

偉人の言葉を引用し続ける純那の言葉はななには届かない。再演が終わった後に純那に言葉を求め、最後に純那自身の言葉を聞いて答えを得たように、やはり純那自身の言葉でなくてはななには届かないんですね。

ななが自刃を求めるのは、『不屈』の象徴であった星見純那が『不屈』でなくなったかを確かめるために純那が自ら膝を折るか『不屈』を貫くかを選ばせたとも思えますし(純那自身に『不屈』を失ったことを自覚させるには自ら膝を折らせなければ意味がない)、純那が自分自身と向き合うよう誘導したようにも思えます。わざと過去形の言葉を突きつけるのも。

 

観客の感情を散々揺さぶった後にしれっと生徒会長やってたことを明かすな。

 

 

魂のレヴュー

「どんな役でも演じられる」という言葉通りに次々と異なる役を演じていく真矢から素の天堂真矢(レヴュー服)を引きずり出して本音を曝け出させて、誰よりも『天堂真矢』そのものを見つめ続けてきたクロディーヌだからこそ本当の天堂真矢を知っていてそれを暴き出すことができたっていうの、真矢クロ濃度高すぎて死ぬかと思った。

しかも、二人がレヴュー服で感情をぶつけ合うシーンに入って、「まやかしの微笑み」「くろに染められゆく感情」って互いの名を歌い出すし、最後はいかにもケンカ後みたいな構図で実質『永遠のライバル』宣言するの最高すぎる……。

天上天下唯我独煌」のあたりも含めて、貪欲で傲慢で負けず嫌いな真矢様も見れたので感謝しかない。胸を刺す衝撃を浴びてしまった。

 

 

ひかり&華恋(過去編)

TVアニメでも華恋ひかりが運命を交換したことは描かれていましたが、今回はそのあたりが詳細に描かれていました。華恋に舞台のキラめきを教え、スタァという夢を与えたのはひかり。本物のスタァを目にして「届かない」と感じていたひかりに「二人でスタァになる」という夢を与えたのは華恋。しかし、この夢は『二人のスタァライト』止まり。

華恋の過去編は、華恋が『約束』に生かされていた舞台少女であったという事実を補強しつつ、舞台少女とは普通の少女としての幸せ(日常)を捨てていること、舞台少女と普通の少女は隣り合わせであることを認識させられました。

 

ひかりvs華恋

『約束』を失い、トマトを食らうことをせず死んでいく華恋

ひかり華恋のキラめきに気づき、ファンになってしまうことを恐れてロンドンに逃げたことを明かす。初めてスタァライトを観劇したときに「スタァにはなれない」と感じていたひかりはファン(観客側)になってしまえばスタァを目指せなくなることをよく知っていたんだと思います。

二度目の『手紙』、かつての『手紙』、過去の自分を燃料にして再生産される華恋ひかり華恋を蘇らせるというこの構図は幼少時やオーディション時とは逆ですね。

観客の近さや舞台に立つ怖さに気づく華恋。今まで『約束』だけを見据えてきた華恋は真の意味で舞台に立ったことがなかったのかもしれない。

そして『約束』があったから気づけなかった「私も、ひかりに負けたくない!」という台詞が出る。そうして初めて『約束』を超えてライバルとして新たな道を進んでいく。

 

 

レヴュー総合

TVアニメから続く『死と再生』というテーマはそのままに、先へ進む『覚悟』や観客の期待や熱に応えて舞台に立ち続ける『覚悟』が描かれていたように思います。いずれのレヴューも塔(高所)へ登り、本音を晒し感情をぶつけ合うことで相手と向き合い、自分自身と向き合うことで決着をつけ、塔を降りて自分の新たな道へと進んでいました。

最後には必ず別れる『スタァライト』。その『別れ』をどう演じるかは舞台少女次第。TVアニメで華恋とひかりが悲劇で終わる結末を書き換えたように。

それぞれがそれぞれの『スタァライト』を演じ切り、悲劇の別れではなく前向きな別れとして塔を降りて先へと進んでいったんだと思います。

 

 

全体

TVアニメでの再演中に「成長することも、大人になることもない。自分を追い込む苦しみ、傷ついて道を諦める苦しみから、みんなを守ってあげる」と独白していたなな。劇場版では、これとは逆の形でみんなを叱咤し、送り出したように思えます。

また、ななは舞台少女の死(挫折し退学する同級生)に誰よりも心を痛め、再演で何度もそれを経験している。そして再演で守っていても二人は退学していた。だからこそ今回のような厳しい試練のような形を取ったんじゃないかと思います。

TVアニメが『理想』や『夢』を描いていたとすると、劇場版は『現実』を描いていたように感じました。

 

 

その他(メモ)

  • スタリラのアルカナ・アルカディアで眞井さんが雨宮さんを「詩音ちゃん」と呼んでいることは知っていましたが、実際に「詩音ちゃん」呼びを聞くと衝撃的だった。
  • 社内広告でシークフェルト、凛明館、フロンティアの名前が登場。
  • 華恋の机の上に青嵐の願書。
  • 華恋とひかりが観劇した『スタァライト』の上演期間が5月14日~28日であったことが判明。日本版監督は天堂裕一郎。
  • キリンのオーディションは5月14日から開始しているが、ひかりが転入していないときのオーディション開始は5月16日。ひかりの転入によって二人の『スタァライト』に重なった?
  • 小学6年生時の華恋の部屋に恐竜の目覚まし時計を確認。小学生の頃から使い続けている?
  • EDでクロディーヌの横にひよこ。
  • 真矢様は「いつだって可愛い」。真理。